2014年7月26日土曜日

【第三回】 特別寄橋 衛藤文秋!

今から20年前のものです。記念誌寄橋文、友人宮大工、衛藤文秋!第三回
・・・・・・・・


【演武会】

翌春、俺らの道場も20人を越えた。
皆に見てもらうんだ、近くの小学校に会場かりに二人で行ったよ!

「お前ここにおれ、まっちょけ」

職員室に入る。30分位して、

「三代帰ります!」

入る時より大きな声。

「校長一人で決めきらん、金玉ん小いせえやっちやぁ。明日三重の教育委員会にいっち来る」

結局借りたよ!怪物三代だ。今でも田舎はむっかしいんじやぁないか。
手造りと言っても銭が要るよ!
プログラムに広告載せて寄付して貰おうという。
二人ずつ組んで三重町、全て回った。こうして、三代さんを大将に小さな演武会が出来た。
その日、俺らが働いた土建屋の親父、酒とビ—ルを

「祝いじゃあ」

高校生に酒持って来た。一時が万事、田舎はオ—プンよ。
土建屋の親父若い頃は、名を出した侠客だったち、近所ん人が言うちょった。
貫禄あったで、体中絵描いとる。
そん親父がで、

「衛藤お前んとこん、大将スゲーのお」

良くしてくれたよ!当時五十歳位、こんな人からも好かれちょった。
終わってからも、大変じゃあ!全員掃除、

「前より綺麗にする様に」


【突撃】

天気のいい日、近所の子供集め、山登るんよ。昼飯は三代さんの握り飯。
ただ歩くんでないんよ、急に立ち止まり、向こうを目指し、指をさし

「敵陣発見、全員突撃」

軍隊調よ、そして先に走り出す。遅れた小さな子は泣きながら、それでも走る。
だけど、正ちゃん、正ちゃん、と慕われていたよ!
今も、突撃好きでないかな、常に突撃よ。


【西瓜】

たまに、悪い事もするんで。
西瓜獲りにじゃなく食いに行こう。
節を除き先を尖らせた小さな竹を用意する。
裸に墨を塗り合う、夜、西瓜畑に行くんだ。それぞれ手探りで西瓜をひっくり返して、竹を刺し、かき回して、汁を吸う、腹いっばい成ったら元通りにしておく。
いつか、おかしいと思った畑のおっさんが番しているんよ。
何時も通り行ったよ!一人が小さな声、

「誰かおるで!」

タバコ吸う度、明るくなっていた。
三代さん、

「バカ!ありゃ、ホタルじゃ」

おっさんの少し前で見つかった!

「コラー!」

何処をどうやって逃げたやら、誰も捕まらんかった!
皆あっちこっち傷だらけ、三代さんのおっさん、

「バカンジヨウガ」

と一緒に大笑いした。後日校内で噂に成った。
追われながら、両脇と口にくわえ、計三個持ち帰ったんだと、又皆大笑い。

「ヤッパリ怪物だー」

一緒にいると楽しかった!


【大工入り】

俺は、高校二年の二月に学校辞めた。悪い事何もしてない。休んだ事もない、大工になりたかったんだ!
何日も考えた。三代さんに相談した!

「お前が決めたんなら何も言わん!頑張れ!男なら、蛇の尻尾より、鶏の頭じゃあ、衛藤!」

これで、吹っ切れたよ!自分が主人公て事か。
大工の弟子についた1ヶ月位経ったある日、

「衛藤がお世話になっています。宜しくお願いします!」

親方と奥さんに挨拶してくれた。
その夜、親方と飯を食べて、弟子の小さな部屋で遅くまで話をしたよ。
三代さん、足つかえるため、斜めになって寝た!
俺は、その小さな部屋で、7年間、大工の手練を重ねた。


【俺の宝物】

何年かして、横浜へ会いに行った。
夜二人で外人墓地に行ったんや!

「懐かしいのお、衛藤!スマンの衛藤!お前来ても、今ん俺じゃ、飯も食わされん!」

ちゅうて、泣いちょった、あの強い三代さんかだよ!
俺も泣いた!
次の日、

「何も土産がないけん今の俺を見てくれ」

一生懸命演武してくれたよ!二人だけよ、涙が止まらなかった!
大分に帰る日、良く洗濯された胸に三代と入った、縫い込みの道着と黒帯をくれたよ!
今でも大事に大切にしている。
俺の長男、正拳て名だ。名付け親は三代さん。名付け親が良いのでスクスク育っている。
この子には、小さい時から三代さんのはなしをしている。
今では俺の知ってる事は全て知っている。
長女、麻衣、大学四年も同じだ。

「又、父さん酒のんで、昔話」

と笑う、今まで私は手紙を書いた事がない、全部、女房に代筆させた、初めてです。
あの三代さんの人間味は、手紙では書けません!

皆さんが羨ましいです。終わり

・・・・・・・・
舘長、改めて、懐かしい、時時を想いながら、衛藤の文章を打ちました。
時代は、星影のワルツ、高校三年生、惜別の歌、とかが流行っていた時代。
高校一年の時、東京オリンピックがあった。
自分の事を恥ずかしい思いで受け止め、歳月の重みを感じます。
衛藤の人柄を改めて、感じ、今横浜で46年の時間がたち、世の中全てが変わりましたね!

0 件のコメント:

コメントを投稿